融資審査では決算報告書のどこを見ているか

計算式なし・どの数字が本当に重要かが分かります

貸借対照表・損益計算書のチェックポイント(だいたい5分でわかる)

 ここでは主に小規模事業者の皆様を対象に、
融資を申し込んだ際、貸借対照表・損益計算書書のどこをチェックされるかを中心に解説しています。
「決算報告書の読み方」的な記事と違い、数式も××率とかいう専門用語も出てきません

 税理士に丸投げしている方は、ぜひご自分でチェックしてみることをお勧めします。

売上が順調でも、これをやったら融資は受けられません

 できるだけ税金は払いたくない、と誰しも思うものですが、
間違った節税対策をしている企業は要注意です。

・4年落ちのベンツを買った。これで今年も法人税を払わなくて済む。

・社長の役員報酬を1,000万円から120万円に減額した。これで所得税を払わなくて済む。残り880万円は会社から借りてることにして引き出す。

このような場合は、融資審査では圧倒的に不利となります。

貸借対照表のチェックポイント

 直近の決算だけでなく、2期または3期分の決算書の提出が要求されます。
各期の数字を比較することで、その会社の経営状況(特にキャッシュフロー)が読み解けるからです。

貸借対照表のチェックポイント

Point1: 純資産<債務超過になっていないか>

 純資産合計がマイナスになっていることを「債務超過」といい、
もしいま会社の資産を全部売却しても借金が返しきれませんという状況です。
ずっと債務超過が続いていたり、その額が大きいと融資は絶望的です。

 ただし、
突発的な事情で大赤字をだしてしまい、その影響をまだ引きずっていているが、
その後順調に回復していて債務超過を解消できますという計画が示せれば融資を受けられる可能性はあります。

 純資産合計は「自己資本」とも言われます。
会社の資産(貸借対照表の左側)は、借りたお金(流動・固定負債)と自分のお金(自己資本)を使って生産設備や現金預金など目に見えるかたちの財産となります。
融資をする側から見れば、立派な会社に見えるけど実はほぼ借金で賄っています、では安全性が低いわけで、
そういう意味でも純資産合計は大切な指標となります。

Point2: 流動資産<会社にどれだけキャッシュがあるか>

 「流動資産」は今手元にある現金預金、1年以内に現金化できる・回収できるお金のことです。
融資は、基本的にはキャッシュを多く持っている企業が断然有利です。
”運転資金に困っているから融資を受けたい”というのが受け入れられたのはコロナ禍の特例中の特例です。

現金及び預金
「現金及び預金」は、ネットではよく月商の3ヶ月分と言われていますが、
実際には、毎月の支出の3ヶ月分くらいが目安となります。

「支出」とは、毎月出ていくお金の総額をいいます。「経費」とは若干異なります。
支出には借入金の返済や税金(特に消費税)の支払いも含みます。減価償却費は実際におカネが出ていくわけではないので支出には入れません。
要するに資金繰り表の支出合計の金額となります。(資金繰り表についてはこちら:運転資金を借りたいという場合は必ず作成すること)

現金預金は、融資する側から見れば”いつでも返せる手元資金”ですから、
一般的に、融資申込金額より現金及び預金のほうが多ければ圧倒的に融資しやすくなります。
売掛金
 「売掛金」はサイトなどにも依存しますが、
一般的な当月締め月末払いの場合では平均月商の1~1.5ヵ月分くらいが適正となります。
これがあまりに多い・前年度と比べ急に増えているという場合は売上の水増しを疑われ、売掛先一覧表の提出を要求されることがあります。

棚卸資産
「棚卸資産」も前年度と比べ急に増えているという場合は不良在庫を抱えている・利益を多く見せるために在庫の水増しをしていることが疑われますので、理由を明らかにできるようにしておきます。

雑勘定について
 未収入金・前渡金・立替金・前払費用・貸付金・仮払金は、資産としての信用度が低く、
かつ会社の資金を流出するのによく使われる項目であることから、できる限り小さい金額であることが理想です。
前期に比べて急に増加したときは大きな懸念材料となります。
特に「役員貸付金」があって金額も大きい場合は、それだけで融資は絶望的と言われています。

また、キャッシュレス決済での売上を「未収入金」で計上しているのを見かけますが、
税務上は問題なくとも、会社の信用度は間違いなく下がりますので止めた方がよいかと思います。

Point3: 流動負債<1年以内に払わなければならないお金が手持ち資金より多くないか>

流動負債の合計が流動資産の合計を上回っていてはいけません。
  流動資産=今あるお金+1年以内に回収できるお金
  流動負債=1年以内に支払うお金
ですので、”流動資産 < 流動負債”は「この会社は1年以内に資金がなくなって破綻します」を意味します
流動資産合計が流動負債合計の1.5~2倍あるのが理想です。

さらに厳しい評価方法だと、確実に現金化できるものだけで流動負債の合計額を超えていなくてはなりません。
  現金及び預金+売掛金+有価証券 > 流動負債の合計


Point4:  固定負債<借入過多になっていないか>

銀行からの借り入れなど、長期で返済する融資がこれにあたります。

設備投資(固定資産)の額が大きければ、当然長期借入金(固定負債)の額も増えます。
ただし、運転資金の長期借入金残高は平均月商の3ヶ月以内が目安となります。6ヶ月を超えると危険です。

なお、いままで無借金経営だったという場合は、返済の実績(=信用)がないということですので、むしろ評価は厳しくなります。

Point5: 固定資産<過剰になっていないか、資金調達方法が適切か>

 業種、業態、会社の経営方針などによって大きく違うのが固定資産の額ですが、
共通して言えるのは、「固定資産合計 < 純資産合計+固定負債合計」となっていなければいけない、ということです。
その意味は、何年も使う高額な固定資産を買う資金として流動負債(1年以内で返済期限の来る短期の借り入れ)を使わない、ということ。
資金繰りの悪化につながるからです。

損益計算書のチェックポイント

損益計算書は経営者の皆様にはなじみの深いものだと思いますが、
”売上高はずっと右肩上がり”だけで経営は順調と認めてもらえるものではありません。

それから、決算から半年以上過ぎた時点で融資を申し込む時はたいてい「残高試算表」の提出を求められます。

損益計算書

Point1 売上高・売上総利益

 直近だけでなく、過去2~3期分の推移や平均値なども考慮されます。
売上高は右肩上がりに越したことはありませんが、
それ以上に経費が増大しているとか、赤字部門からの撤退で売上は減っても利益が増加しているということもあります。
ですので、売上高・売上総利益は絶対的な基準ではありませんが、
「右肩下がり」の状態だとやはり問題となります。原因と対策をしっかり伝えることが必要です。

 今期発売の商品が大ヒット、粗利の多い商品にシフトしたなどで、売上高・売上総利益がいきなり上がる場合がありますが、
そんなときは売上の水増し/在庫の水増しなどど混同される恐れがあるので、事情を説明できるようにしておきます。

Point2 営業利益

 本業での利益です。
売上総利益(粗利)から営業にかかった経費を差し引いたものとなります。

 営業利益は、直近の2期以上で連続して赤字になっていないことが基本です。
慢性的な赤字体質と判断されてしまうと、立派な事業計画書を出したとしても融資は受けられません。

逆に、たとえ突発的な事情で一時的に赤字となっていても、その後順調に回復していれば融資の可能性はあります。

Point3 経常利益

 本業以外での定期的な収益・支出した経費まで入れて計算した利益です。
主な項目は銀行への支払利息ですが、経常利益が赤字だと利息を払うための利益がでていないということになりますので、
融資する側にとっては大問題となります。

Point4 税引前当期純利益・当期純利益

 土地を売ったなど、たまたまその年に発生したものまで計算に入れた利益で、本業の収益力を測るのにはあまり影響がないところです。
ですので、あまり重要視はされていません。

まとめ

 この記事を読んで御社の貸借対照表・損益計算書に多少問題が見つかったとしても、
そうなった理由と今後の対策をきちんと説明できれば、融資の可能性は上がります。
==> 企業概要書や設備投資計画書で説明します

ただし、以下の3つにあたる場合は、融資を受けるのはかなり厳しくなってしまいます。
・債務超過になっている
・2期連続で赤字が続いている
・すでに年商の半分くらいの額を借り入れている

また、節税としてすすめられた手段で、融資申し込みには悪影響となるものもあります。
くれぐれも注意してください。

融資申込についてのご相談・経営診断

決算報告書診断プラン

 決算報告書一式から御社の経営状態を分析します。
経営コンサルタントのような分厚いキラキラしたレポートは作成しません。問題点と改善策をピンポイントでお伝えします。

39,000円(税抜)

融資申し込みをご検討の場合

融資申込サポートをご利用いただいたときは、決算報告書の内容チェックと改善点アドバイスは無料で行います。

無料

中小機構の経営自己診断システム利用による経営診断

中小機構のシステムを使用して、貸借対照表・損益計算書から御社の経営状況診断レポートを作成します。
公共機関を利用するので当事務所の見解は入りませんが、無料で自己診断を代行します。(中小機構にデータが残ることはありません。)

無料

資金調達サポート

日本政策金融公庫の融資サポート

融資審査に強い事業計画書作成で、
資金調達を支援。

こんな時にお役に立てます。

  • 新規事業を展開したい
  • 新しい設備を導入したい
  • 現在の事業を拡大したい
  • 大口受注のため運転資金が必要